【研究紹介】再生医療・若松華蓮さん

きっかけは夏のシーズナルプログラム

 再生医療の研究を続ける三田国際の若松華蓮さん(高3)

――MANAIはどのようにして知りましたか?

(若松さん、以下若松)高校1年生だった2019年夏、科学と英語の両方を学べるサマースクールをネットで探したところ、MANAIのSummer Program(北海道大学で開催)を見つけ参加しました。その後、MANAIが常設の施設をオープンして中高生の研究をサポートしてくれると聞き、MANAI生になることを決めました。

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ここでMANAIのSummer Programを少し紹介します。
 若松さんが参加した2019年夏は北海道大学と2015年3月に設立された「フード&メディカルイノベーション国際拠点」(札幌市・FMI)で開催。7月下旬~8月頭の7日間の日程で行われ、約80人の応募者の中からGrade8~11年生(日本の中学3年~高校2年生にあたる)の25人が選ばれました。MANAIのプログラムは基本英語で実施されるのが特徴で、このSummer Programにも日本国内のほか、中国・フィリピン・モンゴル・タイ・ベトナム・カナダ・アメリカ・韓国・カザフスタンから参加者が集まりました(参加費は230,000円)。
 初日の午前中にオリエンテーションが行われ、午後は研究プロジェクトが紹介された。2019Summer Programのプロジェクトは3つ。参加者たちは、1)運動で反射を高めることはできるか、2)感覚のクロストーク、3)ゴミがお宝に?酵素を利用して使用済み調理油から燃料を生成する方法――のいずれかのグループに所属して、それぞれのプロジェクトを進めました。若松さんが参加したのはプロジェクト3。酵素を利用して、使用済み植物油からバイオ燃料を生成するための効率的な方法を探求するという内容でした。また、固定化酵素を使って、乳糖不耐性の人でも飲むことができる牛乳を作る方法についても実験が行われました。
この年に参加者たちを指導したのは、いずれも北海道大学のParvin Begum学術研究員(分子材料科学)、綾部時芳教授(先端生命科学)、伊藤竜生助教授(水代謝システム)、Guanglei Li学術研究員(環境科学)、根本知己教授(電子科学)、堤元佐特任教授(電子科学)。

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MANAIサマープログラムで発表する若松さん。

 

――MANAI生になろうと思った一番の理由は何でしょうか?

(若松)中学の時はインターナショナルコースに所属していたが、そのころから実験が好きでした。そして夏のサマースクールに参加して、研究は楽しいと改めて思いました。学校以外でも研究を続けることができたらいいだろうなーと思い、MANAIに通うことを決めました。

もっとも、私は帰国子女ではなく日本で英語の勉強をしただけなので、サマースクールではネイティブの人たちと英語で話すのは大変でした。講義もすべて英語で、プレゼンテーションも英語だったのは正直きつかったです。でもそのおかげで、英語はとても上達しました。

――これまでの研究内容を簡単に教えてください。

(若松)学校で最初に携わった研究は、プラスチックを分解する大腸菌を作るというものでした。同時に、現在のイモリの研究を開始していて、途中からこのイモリに専念しました。

――現在の研究はイモリの再生能力を調べるという内容だと思いますが、そもそも再生医療をやろうと思った動機を教えてください。

(若松)筑波大学で再生医療を研究している人が学校の理科の先生でいて、その先生の影響が大きいです。nsCCNという遺伝子に関する文献はたくさんあり、この遺伝子がイモリの再生にかかわっている可能性が高いといわれています。イモリの心臓を使った研究で、再生後にnsCCNの発現量が増えていると指摘する先行研究は結構あります。しかし、本当にそうかどうかはまだ分かっていません。この遺伝子について、詳細を解明することができたら楽しいと思い、nsCCNについて研究するようになりました。

若松さんが自宅で飼っているイモリ。

 

――科学に興味を持ち始めたのはいつごろからですか?

(若松)中学に入るまでは自分が科学好きだと意識したことはなかったが、振り返ると5歳ぐらいから小麦粉を使ってスライムを作ったり、家にあるもので実験まがいなことをしたりしていた。ダイラタンシー(dilatancy)も一度父が見本を見せてくれてから、一人で繰り返しやっていました。(dilatancy:液体を含んだ粉末固体粒子に急激な外力を加えたとき,粒子系が固体化して流動性が失われ,外圧がなくなると再び流動状態になる現象。)また家に食虫植物があったのですが、どの食品をあげると消化できるのか。チーズをあげると枯れてしまうのか、などの実験を一人で行っていました。

――科学を意識するようになったのは?

(若松)中学3年生の進路選択の時、高校では現在の理系コース(MSTC、MedicalScienceTechnologyCourse)に進むことを決めました。三田国際は実験が多い学校で昔から実験が楽しかった。だから高校ではMSTCもいいなとは思っていました。

――MANAI生になって一番良かったと思うことは?

(若松)学校では(さきほど言及した)再生医療専門の先生が常勤ではなかったため、実験をしてもきちんと見てくれる人がいなく、ミスも多く、進捗が遅かった。MANAIでは実験の進め方などイチからメンターの先生たちが指導してくれて、実験でもミスが減っていった。MANAIに通うことでさまざまな知識が身に付きました。

――現在の研究で一番苦労したところは?

(若松)nsCCNという遺伝子が再生にかかわっているのかを調べているのですが、実験で踏むべきステップが多く、きちんとRNAを抽出できるようになるまで時間がかかりました。最初はどこで間違えたのかも分からなかったのですが、MANAIに特別講師としていらした東京工業大学の二階堂雅人先生にひとつ一つのステップが正しいか、試薬の設定が間違っていないかなどを相談し、ようやくきちんとRNAを抽出できるようになりました。

――どのような人にMANAIを勧めますか?

(若松)やりたいテーマが決まっている人ももちろんいいが、どのような研究をしたいか・できるかが分からない人に特にお勧めします。MANAIでは定期的に研究生のためのワークショップが開催されるが、毎回テーマが異なり、自分が詳しくない分野について博士号を持つメンターの先生たちが面白く紹介してくれます。その中から、特に興味を持ったことを研究することができます。

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これまで開催されたワークショップは:

・「癌とはなにか」
・現代数学「トポロジーを理解する」
・「男性脳と女性脳はどう違う?」
・分子生物学から読み解く進化。「クジラ類の起源とは?」カバが現存する種の中で、クジラ・イルカに最も近い親戚だった!?
・シーラカンスの遺伝子的特殊性について  など

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――最後に、日ごろのスケジュールを教えてください。

(若松)高3で受験期に入ったため、現在は学校での実験は行っていませんが、それまではほぼ毎日、学校で実験を繰り返していました。また下校後、週に2回程度は20:00、21:00ぐらいまでMANAIで研究を続けました。日曜日はMANAIでワークショップやセミナーが開催されていたので、そちらに参加していました。

現在は学校で研究を続けることができなくなった代わりに、週3回ほどMANAIが契約している研究室で実験を行っています。私の場合は海外の大学を目指しているため、日本の大学受験のように日々やらなくてはいけない勉強はあまりない。MANAIがあるおかげで、高3の現在も研究を続けることができています。

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若松さんは今月下旬(2021年7月)、「日本神経科学学会」が一年に一度開いている「日本神経科学大会」(@神戸)でポスター発表を行う予定です。