今年の夏、MANAI生である若松華蓮さん(高校3年生)が1週間、大阪大学大学院でインターンを経験しました。インターンは、大阪大学が高校生向けに提供しているプログラム「SEEDS」(Science & Engineering Enhanced Education for Distinguished Students)の一環として行われました。若松さんが訪れたのは、細胞内の現象である「オートファジー」研究で世界的に有名な、生命機能研究科・医学系研究科の吉森保栄誉教授の研究室。若松さんのほか、地元からも高校1年生が一人参加して、月~金曜日までの5日間、普段は触れることができない最先端の環境下で基礎研究などについて学びました。若松さんにその詳細や感想を聞きました。

一番左が若松さん。中央は吉森保教授。
――大阪大学での5日間、具体的にはどのようなことをしましたか?
1週間の流れを説明しますと、月曜日の午前は、全体の説明&ラボツアー。午後は(人由来の細胞として最初に培養された)「HeLa」細胞の培養を行い、次の日にどれだけ培養できているのかを見ました。火曜日の午前は、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動:タンパク質固有の電荷や分子量の違いを利用して、電気で各分子を分離する手法)の下準備。使うゲルを作ったりしました。午後は実際に(電流を)流すと同時に、ウェスタンブロット(WB:SDS-PAGEを行った後、タンパク質を疎水性膜に転写して、抗体を用いて特定のタンパク質を検出する方法)もしました。
水曜日の午前はWBの続きで、午後は免疫染色についての説明がありました。木曜日の午前は、前日に染色したものを顕微鏡で観察して、目的のタンパク質にちゃんと染色できているかを見ました。具体的には、細胞の中でどの辺りにそのタンパク質が位置しているのかが蛍光(色)で見ることができるので、その観察をしました。午後は、取ったデータを解析し、結果の考察についても学びました。金曜日の午前はもう一つのラボの見学。午後には全体のまとめがあり、その後は吉森先生とインターンの2人でピザを食べに行きました。
――念願のインターン。実際に経験した感想は?
私はRNA・DNAの遺伝子ベースで(研究を)やっているが、吉森先生の研究室はタンパク質ベース。電気泳動でもそのタンパク質バージョンであるSDS-PAGEなど、研究の方法、使うものが全部新しいことだったので、(すべての経験が)新鮮でした。
中でも一番面白かったのは結果を見る時。例えば顕微鏡でも、何千万(円)とする研究用の顕微鏡が何個もある部屋があり、その顕微鏡で見ると、本当にキレイに見えて、学会発表で見るようなキレイな発色でした。大学院生はこうやって研究しているんだなーと思いました。テレビなどで見ていたものを実際に見ることができて感動しました。
研究室のみなさんは仲が良さそうでした。思っていたよりも長く、朝から晩まで研究室にいましたが、自分も一日中研究していたいタイプなので、大変そうではありましたが楽しそうでした。
研究室で実験を一通りやって、時間の使い方も勉強になりました。実験によっては1時間とか待ち時間がありますが、そういう時にほかの実験を並列してやったりして、みなさん工夫されているのが印象に残りました。
――吉森先生の著著『LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)を読んで吉森研究室に興味を持ったということですが、実際に先生にお会いした印象は?
思っていたよりも柔らかく、面白い先生でした。吉森先生は、日本の未来の研究者が少ないこと、(若い世代の)理系離れのことも考えていらっしゃって、「研究者になってください」といわれました。
インターン中、吉森先生と大学院1年生との定期的な会にも参加することができて、科学的思考や論理的な考え方について先生が話をされました。例えば飲むコラーゲンという商品があるが、コラーゲンは体の中で消化され、分解されてアミノ酸になるから、そもそもコラーゲンとしては機能しないのではという事例。普通に売られているものが、科学的であるかを考える思考が必要という話でした。ただ、実際には(飲むコラーゲンは)なぜか効果があるようで、その要因は分かっていないようです。
――大学生や院生との交流はありましたか?
大学生は見かけませんでしたが、研究室の人とは休み時間とかに少し話をしました。院1年生の人で吉森先生のブログで私のメールについて読んでくれていた人がいて、その人からは「研究に対する楽しい気持ちとかを忘れていたから、とっても触発された」といわれました。
――5日間を振り返っていかがですか?
研究の新しい方法や具体的なやり方などいろいろなことを獲得することができたが、そもそも研究している人の様子、日常的な様子、「こういう感じなんだ」というものを見ることができたのが一番大きかったです。一日研究だけをするという経験は初めてでした。遊園地に行った感じでとても楽しかったです。