第44回「日本神経科学大会」

第44回「日本神経科学大会」(Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society)参加報告

初めて学会に参加したMANAI生の2人。(左が若松華蓮さん、右がジョシュアさん。)

 

MANAIでは、今年7月に開催された日本神経科学大会@神戸で2人のMANAI生がポスター発表を行いました。学会は同じ領域や分野の研究者たちと出会える貴重な機会。2人にその感想を聞きました。

【Joshua衣笠Karpelowitzさん】

Q:学会参加は初めてでしたか?

はい、初めてでした。僕は4日間すべてに参加し、午前中は講義。お昼にはランチョンセミナーがあり、午後はポスター発表&講義というスケジュールでした。

Q:初めて参加した学会はどうでしたか?

MANAIではいつも20人ぐらいなのでそこまで多くの意見は聞けないが、学会は何百人・何千人という人が参加しているが一番の違いでした。自分とは研究内容が違う人からアドバイスをもらったり、全然興味がなかった分野についても学べたり、最新の研究メソッドを知ることができたりしたのがよかったです。

一番楽しかったのはポスター発表。中でも、蚊の研究をしている大阪大学の大学院生(シンガポールからの留学生)の発表に興味を持ちました。データ分析にどのようなソフトを使っているのか、またその分析方法、使用しているプロテインの種類などについて聞いてみました。メールアドレスを交換したので、またどこかの学会とかで会えるかもしれません。

 

ジョシュアさんのポスター発表資料

 

Q:ジョシュアさんの研究は既存データを2つのプログラミングを使って分析するというものですが、そのような手法で研究している人は学会ではどのくらいいましたか?

5割の研究がデータ収集から自分のところでやっていました。僕のように(公表されている)データを使って再分析している研究は約3割。(世の中には)すごいスピードで新しい研究が出てきているが、そのデータに間違いがないのか、きちんと確認が取れていないものもあります。(そういう意味で)公表されているデータを再解析することは大切です。

Q:ジョシュアさんのポスター発表は抽選でオンラインとなりましたが、質問などは出ましたか?

アドバイス的な意見をもらいました。僕はプログラミング言語としてC++を使おうと思っていたが、C++ではそれぞれのプログラムを書くのに時間がかかるので、パイソンを使ってみたらと言われました。現在、パイソンについて勉強しているところです。また、分散値の計算方法についても聞かれました。僕はテイラーシリーズ(テイラー級数)という方法を使っていますが、リニアリグレッション(線形回帰)モデルがいいのではと提案されました。ポスター発表は全体的に、思っていたよりもインフォーマルな感じで、いろいろな意見を聞くことができました。

Q:自分のポスター発表を含めて、いろいろな研究者たちと意見交換をしたりほかの研究者の発表を聞いたりして、今後の研究につながりそうな知見・発見はありましたか?

現在は視覚の研究をやっていて、痛覚についてもやりたいということは以前話しましたが、今回の学会では聴覚を対象に似たような研究をしている人がいました。聴覚の場合は、バキュームチェンバーなどを使って外から音が入らないようにすることで、できるだけ音が生じない形で研究をすることができます。一方、視覚はより複雑でほかのノイズ(が入ること)は避けられないので、今後はデータの処理がより簡単な触覚・聴覚で研究することも考えたい。また、今は自分でデータを集めていないので、大学生になったら機材・道具が揃っている理研のような専門機関に所属したいです。

Q:最後に、学会に参加した感想をもう一度お願いします。

これまでは、MANAIでメンター・先生たちの研究を聞いてそれぞれ違う分野のものとして見ていたが、学会で一斉に違う研究を見ることで、一見違うと思える分野にもつながりがあることが分かりました。発表できる研究があるか分かりませんが、来年もほかの研究を見るために学会に行きたいです。

 

理研の研究者(中央)との記念撮影。

 

【若松華蓮さん】

Q:学会に参加した感想を教えてください。

学会発表は初めてだったので最初は緊張していたが、(自分が発表する)前日にほかの人の発表を見たりして少し緊張がほぐれました。(発表の時は)高校生扱いではなく、真摯に研究内容を見てもらえたのが良かったです。

 

若松さんのポスター資料

 

Q:ポスター発表では質問などは出ましたか?

もっと質問がグイグイくる感じかと思っていたが、(みなさん)優しく質問してくれました。名刺をくれた先生もいます。今回発表したIGFBPというたんぱく質については、発生に関わっていることは知っていたが、再生にも関わっているとは知らなかった、などと声をかけられました。また、私は今回遺伝子をイモリの肢で見ましたが、ネズミはゲノムが全部分かっているから、イモリ以外のモデルを使った方がやりやすいのではとアドバイスされました。これからの研究では、対象とする生物や研究方法についてもバリエーションを増やして(得られる)データを深めていきたいです。

ポスター発表する若松さん。

 

Q:ほかの人の研究で自分の研究にも取り入れてみたいと思う内容はありましたか?

学会では蛍光たんぱく質を使って光らせる研究をしている人がいて、自分の再生の研究にも応用できそうだと思いました。また、nsCCNというイモリ特有の遺伝子はイモリの肢の先端で発生していますが、具体的にどこで起きているかが調べられればいいなと考えています。*FISH法(Fluorescence in situ hybridization)という方法があり、現在検討しています。(*蛍光物質をつけたプローブ:標的遺伝子と相補的な塩基配列を有する合成遺伝子、を標的遺伝子と結合させ、蛍光顕微鏡下で可視化する手法。)

 

Q:ほかに興味を引かれた研究はありましたか?

たくさん見たので細かくはあまり覚えていないのですが、サルがどこまで自分のことを認識しているのかを鏡などを使って調べている研究は分かりやすく、面白かったです。それ以外では発生やシナプスに関する研究が多かったです。
初めて参加した学会はとても楽しかったです。そもそもコロナで県を超えて課外活動をすることがなかったので、いろいろなところに行って、たくさん知識を得られて、自分のポスター発表もして達成感がある濃い2日間でした。

Q:今後取り組みたいこと、参加してみたい学会はありますか?

先ほど触れたFISH法については、日本組織細胞化学会(Japan Society of Histochemistry and Cytochemistry)が「組織細胞科学講習会」を開いていて(毎年実施、今年はコロナでオンライン形式となり8月18日~9月19日まで行われた)それを受講しています。

 

学会事務局の取材を受ける若松さん。