【活動報告】「僕たちのカブトムシ研究」セミナー

(報告:松田)
(セミナー概要:https://manai.me/seminar_ja/3004/)

MANAI Seminarは、「科学の芽」をもっている皆さんが、それぞれの芽を育てるための場です。科学コミュニケーターや第一線のサイエンティストが、トーク、ハンズオン、ワークショップなど、題材に応じた適切な手法で「科学の茎」を伸ばし、枝分かれさせ、太くするお手伝いをします。

 

2021年の7月〜8月、MANAI Seminarでは、夏休みの風物詩である「自由研究」にまつわるセミナーをお届けしました。第一弾としてお越しいただいたのは、緻密な自由研究をもとに、大学の研究者を共著者として学術論文を報告した埼玉県の柴田亮さん(※セミナー当時、小学6年生)です。その共著者である小島渉さんも登壇し、研究者としての道のりを語りました。セミナー参加者の保護者の方々も質問を寄せるなど、子どもの教育観点でも参考となるものでした。

初めての研究発表となる柴田さんですが、堂々と、ハッキリした喋り口は、大人の研究者となんら変わりません(むしろ大人顔負けかもしれません)。発表タイトルは「シマトネリコに集まるカブトムシの研究2020」。「シマトネリコ」とは植物の名前です。本来、夜行性のはずのカブトムシが、シマトネリコには昼間になっても滞在しているという不思議な現象を科学的に分析していきました。

 

柴田さんは夏休みの間じゅう、保護者の方の協力も得て、深夜の観察・記録も行ったそうです。樹皮を削る力強い音を捉えた動画も披露しました。

参加者との質疑応答も活発に行われ、お互いに刺激を与えあったようです。

 

セミナー後半では、柴田さんに研究の相談を受けて“伴走”し、英語論文の共著者となった小島渉さんが登壇しました。「カブトムシ研究者への道」と題して、少年時代の思い出の図鑑類の紹介に始まり、昆虫生態学者として“飯を食う”ようになるまでのキャリアを語って、大人・子どもの両方を惹きつけます。

参加者の保護者からも、質問が飛び出しました。「子どもの昆虫への興味にどこまで付き合えばよいか悩む」「研究を助ける際に親として心がけていることはあるか」といった質問に、急遽、柴田さんのお父さまも画面に登場。親子で自由研究に取り組む際にたいへん参考となる解答をいただきました。

 

セミナーの中で、小島さんはMANAIも大切している「研究のおもしろさ」を2つの観点で、話してくださいました。柴田さんの取り組みも、カブトムシが昼間にも活動しているという“想定外”から始まり、学術論文になるほどの“誰も見つけていない現象の発信”につながりました。このように、自由研究は取り組み方しだいで科学の入り口として十二分である、ということが良くわかるセミナーとなりました!